屈折異常について

屈折異常

屈折異常とは、外部から目に届けられた光が網膜上の一点に焦点を結べない状態です。先天的に眼軸が長かったり、短かったり、眼に外傷を受けたとき、水晶体の厚さをうまく調節できないときに生じます。

屈折異常のタイプ

近視 遠視 乱視 老眼

近視

主に遠くの物を見るとき、角膜や水晶体を通った光が網膜よりも手前でピントを結んでしまい、網膜上にぴったり合わせられなくなる状態です。大別して「軸性近視」と「屈折性近視」があります。前者は、角膜から網膜までの距離(眼軸)が長いことによって引き起こされます。遺伝的な要素が強く、両親がともに近視の子どもは、両親がともに近視ではない子どもよりも7~8倍も近視になりやすいと言われています。

後者の屈折性近視は、何らかの要因によって角膜と水晶体の屈折力が強すぎるために起こります。小学校の高学年ごろから出現することが多く、学校で黒板の文字が見えにくくなったり、暗いところで物がはっきり見えなくなったりします。

近視の進行を抑制する「マイオピン」点眼治療とは

マイオピン

当院では、近視の進行を抑制する低濃度アトロピン点眼治療を行っております。治療にはマイオピンを使用します。この点眼薬は、アトロピン(0.01%、0.025%)を配合させた点眼薬で、Singapore National Eye Center(SNEC:シンガポール国立眼科センター)の研究に基づいて開発されたものです。現在、国内でも7大学(旭川医科大学、大阪大学、川崎医科大学、京都府立医科大学、慶応大学、筑波大学、日本医科大学)で臨床研究が行われています。

近視の進行を抑制することが大切な理由

子どもの近視は、主に眼球が楕円形に伸びてしまう(眼軸長が伸びる)ことで、ピント位置がずれることにより生じるケースが多くあります。近くを見ることが習慣化してしまうと近視になりやすく、一度眼軸長が伸びてしまうと戻ることはありません。そのために眼軸長の伸びを抑えることが、近視進行を抑制するためには重要となります。また、近視は高度な近視の場合、回復不可能な視力喪失、黄斑変性症、網膜剥離、または緑内障に発展する可能性もあるといわれています。低濃度アトロピン(マイオピン)には、眼軸長を伸展させる働きに関連するムスカリン受容体をブロックする効果あると言われています。

眼軸長

低濃度アトロピン点眼薬が選ばれる理由とは?

低濃度アトロピン点眼は、近視の進行を遅らせる(眼軸長の伸展を抑制する)という点で統計的にも臨床的にも有意義な効果が確認されている治療の一つです。最適な濃度(0.01%、0.025%)のアトロピンを配合することにより、近視の進行スピードを効果的に抑えると同時に、アトロピン1%点眼薬よりも副作用を軽減しています。

眼軸長

低濃度アトロピン点眼薬は安全ですか?

  • 点眼終了後、目の遠近調節機能の低下および瞳孔が開き続けてしまうという報告はありませんでした。
  • アレルギー性結膜炎および皮膚炎の発生はほとんどありませんでした。
  • 眼圧に影響を与えるという報告はありませんでした。
  • 白内障を発症させるという報告はありませんでした。
  • 電気生理学上、網膜機能に影響を与えるという報告はありませんでした。

出典:Chia A, Lu QS, Tan .Five-Year Clinical Trial on Atropine for the Treatment of Myopia 2: Myopia Control with Atropine 0.01% Eyedrops Ophthalmology. 2016 Feb;123(2):391-9

マイオピンの治療効果

  • 2年間の使用で近視の進行を平均60%軽減させると言われています。
  • 0.025%製剤は0.01%製剤と比べ、より優れた近視進行抑制効果を示すことが確認されていますが、0.01%よりもまぶしさを感じやすくなる場合があります。

マイオピンの特徴

  • 副作用がほぼ皆無の近視進行抑制薬です。
  • 近視の進行を平均60%軽減させると言われています。
  • 目の遠近調節機能(手元に見る作業)にほとんど影響を与えません
  • 毎日就寝前に1滴点眼するだけの、非常に簡単な治療法です。
  • 目薬(1本5ml)は両眼用で1カ月の使い切りです。
  • 点眼薬はGMP(医薬品製造管理および品質管理基準)準拠の工場で製造されています。
  • 日中の光のまぶしさに影響を及ぼさないため、サングラスもほぼ不要です。

治療の対象となる方

  • 軽度から中等度(-1.0D~-6.0D)程度の近視で6~15歳の方、15歳を過ぎても、近視は進行するので適応となる場合があります。
  • 3カ月ごとの定期的な通院が可能な方、検査・診察による治療効果判定のほかに合併症が生じてないかのチェックも行いますので、予定された再診期日を守れない傾向がある場合は、治療を継続できないことがあります。年齢にもよりますが、2年以上の継続をお勧めします。当院では、まず2年間使用していただき、効果判定をしながら治療の継続の可否につき、ご相談させていただいています。
  • 就寝前の点眼が毎日可能な方、目薬は感染症などのリスクを避けるため、開封してから1カ月後に必ず破棄していただきます(残量があっても破棄)

マイオピンの治療費用

マイオピンの治療は自由診療です。保険診療とは別日に行います。健康保険や医療助成制度は適応されません。

0.01% マイオピン
治療費用 [マイオピン1本3,800円(税込)、検査代2,000円(税込)]
初回治療費用 マイオピン1本 + 検査・診察 5,800円(税込)
1ヵ月後の治療費用 マイオピン2本 + 検査・診察 9,600円(税込)
3ヵ月ごとの治療費用 マイオピン3本 + 検査・診察 13,400円(税込)
0.025% マイオピン
治療費用 [マイオピン1本4,200円(税込)、検査代2,000円(税込)]
初回治療費用 マイオピン1本 + 検査・診察 6,200円(税込)
1ヵ月後の治療費用 マイオピン2本 + 検査・診察 10,400円(税込)
3ヵ月ごとの治療費用 マイオピン3本 + 検査・診察 14,600円(税込)

※資料:マイオピンについて

近視の進行を抑制する「オルソケラトロジー」とは

就寝時に特殊なデザインの高酸素透過性コンタクトレンズを装用し、角膜の形状をやや平坦化させ、視力を回復させる近視矯正法です。
中等度までの近視矯正効果は高く、日中裸眼で生活できるようになります。その上、小児の近視進行抑制効果が報告されています。

オルソケラトロジーの近視矯正法の詳細

オルソケラトロジーのメリット

  • 装用開始数時間で視力の改善を実感できます
  • ハードコンタクトレンズなので取り扱いが簡単です
  • 日中裸眼で生活できるようになります
  • 小児の近視進行抑制効果が期待できます

オルソケラトロジーのデメリット

  • 通常のコンタクトレンズ同様、レンズに慣れるまでは装用感が気になることがあります
  • 適切なケアを怠ると角膜上皮障害や角膜感染症を発症するリスクがあります

オルソケラトロジーの安全性

オルソケラトロジーのレンズのイメージ画像

オルソケラトロジーは、アメリカで30年以上前から研究・施術され、現在、アメリカ・ヨーロッパ・アジアを中心に、世界各国でその安全性と効果が認められ、実施されております。レーシックやICL等の外科的手術と異なり、レンズ装用を中止すれば、角膜の形状は元に戻りますので、安心してお使いいただけます。
また、日中装用のコンタクトレンズとくらべても、夜間の装用なので、ほこり等が目に入ったりせず、レンズを紛失する心配も減るなど、安全・快適にお使いいただくことが出来、リスクは一般のコンタクトレンズと同等またはそれ以下となります。

使用するレンズ

マイエメラルドのロゴマーク

当院ではマイエメラルド(Emerald™)というレンズを用いて治療を行います。
マイエメラルドは、米国FDA・ヨーロッパCEマーク認可済の唯一のレンズで、アジア各国においても長年の使用実績があり、日本人の角膜形状に対して効果と安全性が確認されております。
もちろん、厚生労働省からも認可済です。

レンズの構造

適応範囲

  • 年齢制限なし(最小年齢6歳)
  • 近視度数 -1.00D~-4.00D、乱視度数-1.00D以下
  • フラットK 38.00D~48.00D
  • 角膜内皮細胞数 2000個/㎟以上

治療の流れ

治療の流れ

オルソケラトロジーの治療費用

費用について

オルソケラトロジーを用いた近視進行抑制治療は、健康保険の適用外であり自費診療になります。医療費控除の対象になりますので、10万円を越した費用は補助が得られます。
詳しくは下記の国税庁による回答ページをご覧下さい。

オルソケラトロジー(角膜矯正療法)による近視治療に係る費用の医療費控除
適応検査:11,000円(税込)
オルソケラトロジー治療を行うにあたり、眼の状態に問題がないかを確認し、トライアル用レンズを用いてレンズのフィッティング確認を行います。
トライアルレンズのレンタル:保証金50,000円(税込)
「本格的にオルソケラトロジー治療を開始する前に装用を試してみたい」という方に、1~2週間お試しいただけるトライアルレンズをご用意しております。
  • ※トライアルレンズは、ご利用後にご返却いただきます。
  • ※保証金はレンズ返却時に返金いたします。但し、紛失・破損の場合は返金できません。
  • ※トライアル後に治療を継続する場合は、保証金を差し引いた金額(100,000円)をお支払いいただきます。
初期費用:両眼150,000円(税込)
適応検査終了後に治療を希望される場合には、初期費用の全額を窓口でお支払いいただきます。
初期費用には、「治療開始後3ヶ月までの診察費用、初回分のレンズケア用品(レンズケース、専用洗浄保存液、スポイト、装着液)」を含みます。角膜乱視が強く特殊レンズ(プレミアムレンズ)を使用する場合には、初期費用は両眼で170,000円(税込)です。
診察費用:6,600円(税込)
3ヶ月に1回の定期検査を行っていただきます。1回あたりの診察費用は6,600円(税込)です。
オルソケラトロジー治療中に、角結膜上皮障害や角膜感染症などを生じた場合、治療に必要な点眼薬は保険適用にはならないため、別途費用が必要です。

遠視

角膜や水晶体を通過した光が網膜よりも奥の辺りで焦点を結んでしまう状態です。遠くを見るときは何とか焦点を調節することが出来るのですが、近くを見るときはうまく調節できません。そのため、眼に負担がかかり、疲れ目や頭痛、肩こりなどを併発することが良くあります。

乱視

角膜や水晶体、硝子体などの形が歪んでいるため、焦点が1か所に集まらなくなり、対象物がダブって見えたり、ぼやけて見えたりする状態です。眼の形状により、乱視の状態も様々ですが、歪がひどい場合は眼精疲労を併発することもあります。

老眼

加齢に伴って水晶体や毛様体などの機能が衰え、ピントの調節がうまくいかなくなる状態です。個人差がありますが、一般的には40歳ごろから目の焦点を合わせにくくなり、老眼の症状が出始めます。そして徐々に進行し、65歳くらいになると、その後はゆるやかになります。

メガネ・コンタクト処方について

眼鏡やコンタクトレンズを作る際には、まず眼科専門医を受診することが大切です。眼の状態を判断し、どのようなレンズが適切なのかを判断する必要があるからです。さらに、何らかの眼科疾患が潜んでいないか確認するようにしましょう。